現代音楽家ギャヴィン・ブライヤーズの代表作『タイタニック号の沈没』
タイタニック号が沈没する際、甲板に残って最後まで演奏を続け、死にゆく人たちを励まし続けたという弦楽四重奏の故事に基づいた、一時間余の音響作品。
仕事中の待ち時間。といっても10分.20分のハナシじゃない、夕方までの4時間弱。・・・長い。
近頃うたた寝の快楽を取り戻したので、車内で仮眠をとることに。 イヤホンをはめて、ambientな曲ばかり詰め込んだプレイリストをシャッフルして目をつむる。
ヒュプノスの手引きに身を任せ、あっという間に微睡みの海原へ旅立つ。
メールの着信音がなり、不意に、意識の大陸に引き戻される。
時計をみると1時間程経過。
ipodは、『タイタニック号の沈没(The Sinking Of The Titanic)』を選択中で、冒頭の長いノイズが鼓膜をくすぐってくる。
フロントガラス越しに空を見上げると、曇天。
黒雲でなく、雨模様でもない。白の絵具を重ね塗りしたような曇り空。 一面に広がる雲が太陽光を透過して、大きな面光源となって照らしだす昼下がりは、コントラストが低く、どこか浮遊感がある。
凝り固まった全身を伸ばそうと外に出て伸びをしたついでに、辺りをふらっと散策する。
寝起きのせいか、耳元でなってる音楽のせいか、ふわふわとした気分のなか、馴染みのない街を歩いていると、風に揺れる送電線が目につき、「あれはきっとFleaの仕業だな。」なんてしょうもない妄想。
たいして腹は減っていないが、なんとなく口寂しさを感じて、通りがかりのドラッグストアに立ち寄り、今の気分を損なわない≪生々しくないもの≫を物色。平日この時間帯の客層はだいたい高齢者。そして中東系の外国人。照明の潔癖さに馴染めず、アイスを買って、足早に店をあとにして齧りながらまた歩く。
公園で遊んでいる母子の笑顔は完全に人ごとで、だからこそ素直に微笑ましい。
新幹線の高架下につくられた遊歩道。その両端に植えられてる植物を流すように眺めていると、天狗が持っていそうな葉の植物を見つけた。プレートにはヤツデと書いてある。葉の形がその名の由来だろうと、数えてみると角が九つある。まだ頭が覚醒してないのか…と、もう一度数えるが、やはり九つ。
すーっと辺りが一段分くらい暗くなったので、来た道を戻る。
案の定、ぽつぽつ小雨が降りだした。
残念ながら街角遊泳、終了。
雨が上がることを願いつつ、車に戻って、日が暮れるまであと1時間半。
shinsuke