今月の10日。 抜糸から幾日も経たないうちに、高速バスに揺られ地元へ帰った。 独りでの帰省は、結婚してから初めてのことだ。 さらに、実家に顔を出さないどころか連絡すらしなかったのは何年ぶりだろう。
まるで20代前半のフウテンのノリがぼんやりと身体を包んで、不思議な感じだった。
帰省の要件は、親友の美容室のオープンを祝うため。 そして、戦場であり城でもある店内に飾る写真についての打合せを兼ねて。
夕方前。店に着くと、奥さんが出迎えてくれて、「あいつは?」と訊ねると、L字に曲がった先に案内され、親戚を施術中の親友は照れ臭そうに「よう。」と軽く手を挙げた。 しばらくして、お客さんが帰り、今日はこれでお終いだというので、写真のサイズや、どんな額装にするか、どこに置くか諸々、打ち合わせた。
その後、泊めてもらう親友の家に一度お邪魔して、布団一式をそいつの実家へと借りに行くのに同行した。 そいつの実家に行くのは実に高校生ぶりで、おばちゃんとは10年前のそいつの結婚式以来だ。
ますます、時間が遡る感覚に体中がムズムズした。
20時。スーパーで買い出しをして、オレのリクエストで黄楊のギョウザをテイクアウトし、同郷の親友と、急きょ立ち寄ることになった高校時代の仲間、そしてオレと主役夫婦の、5人でオープン当日の店内でささやかなパーティーをはじめた。
ギョウザの臭いが漂うなか、少し申し訳なさを感じながら乾杯。
案の定、昔話に花が咲いて空調の壊れた肌寒い店内にほの温かい空気が流れる。 そんな中、オレ以外のジモティ3人は、頻繁に釣りに興じているらしく、一時、釣り談義で盛り上がっていた。 釣りは小学校以来やっていないオレ。3人の話にへぇへぇと相づちを打っていた。
店の裏口で、タバコを吸っていると、当時のリーダー格で現在、高校教師をやっているリアルグレートティーチャーがやってきてタバコに火をつけながら、「あんたの趣味はなんけ?」と聞かれたので、少し考え、「趣味ねぇ・・・どうかな特別ねぇかも。」と答えた。
グレートティーチャーは翌日も部活で忙しいらしく先に帰った。
その後、4人で日付を跨ぐ頃まで飲んで、それぞれ明日もあるのでお開きにした。 虫垂炎の傷跡が鈍く傷みだして、それはまるでこの夜の終わりを惜しんでいるようだった。
翌日。始発のバスで帰る為2人と一緒に出て、10分程度店に寄り、親友のポートレートと結婚10周年の2人の写真を撮って、帰路についた。
高速道路をたいして走らない高速バスに揺られながら、グレートティーチャーの「あんたの趣味はなんけ?」が頭のなかを廻っていた。
趣味。オレの趣味・・・。音楽を聴くのは大好きだし、写真を撮るのももちろん好きだ。こうして駄文を書き連ねるのも一向に飽きないし、そういうのが趣味だろうか? でも、いざ「あんたの趣味はなんけ?」と聞かれたら、胸をはって、それらをあげるだろうか?
う~ん。どうだろう。
それから一週間が過ぎたが、やはり自分の趣味はなんだかわからない。
やはり特別無いのかもしれない。
もし、先にあげた好きなことがこの先も変わらず好きあり続けたら、いつか堂々とそれらが趣味だと言える日がくるかもしれない。
あなたの趣味はなんですか?
Shinsuke