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Shinsuke

Dancer in the Dawn

更新日:2020年8月1日


今朝。5時に家を出て芥屋の海水浴場へと車を走らせた。 目的は早朝登山。

アタックするのは、いままで何度も登っている立石山。 209メートルの低山で、40分程度で登れる手軽さと、中腹あたりから拡がるゴツゴツとした岩場、眼下に玄界灘を望める見晴らしの良さが家族そろって気に入っている。 これまでは昼のうちに登るばかりで、こんなに早い時間帯は初の試み。

理由は、「なんかスッキリしたい」それだけ。 毎年この時期は、一年間で積もり積もった色んなモンが胸の内を悶々とさせるので、「なんかスッキリしたい」衝動にかられる。 今回はその方法が早朝登山。急に思い立った次第。

前の晩、諸々準備しながら、暗闇のなかを歩く自分を想像して少し不安になったり、気温が低い予報に億劫になったり。 4時起きに備えて早めに布団に入った。

道中。前後に走る車はなく、時どき軽トラとすれ違う程度の田舎道。 道行きに並ぶビニールハウスには橙色の灯りが点り、それが妙にクリスマス感を醸していた。 おそらく時期的にカツオ菜の最盛期なのだろう。

30分くらい経ち、海水浴場の駐車場に到着。

車内で最終準備を済ませ、公衆トイレで用を足して、いざ。 ヘッドライトが照らす先へと足早に進んでいく。 駐車場の外灯の明かりがどんどん背中から遠のき、深い闇に取り囲まれてゆく。 登山口が廃墟となったホテルの脇にあり、昼間でも気が引ける最初の難関。そろそろ見えてくる頃とつばを飲む。が、ホテルは取り壊され更地になっていた。 とたんに安堵感が血流にのって全身を巡り、俄然やる気になった。

いつもよりハイペースなのか、いつもと違うシチュエーションに緊張してるからか、すぐに息が切れる。 天気予報にビビり、念押しの防寒対策が裏目に出て、インナーは汗だくになり、一層しんどい。

10分ほど登ると、大きな岩が重なって立つポイントに着く。 本ルートはその横を軽く迂回するようになっているが、我が家は、その岩肌をよじ登り上で一息入れるのが定番。 今回もよじ登り、着込みすぎた服を脱ぎ、給水し、小休憩をいれた。 その際にヘッドライトの存在を忘れたままニット帽をとり、危うくヘッドライトを落としそうになり冷や汗をかいた。

息を整えて、再出発。 森の中を歩いてきた前半とは変わって、段々と岩が多くなり急勾配な細道の両側をびっしりとシダが茂っている様子を激しく上下左右に揺れる照明がうつし出す。

静寂のなかを、擦れるような足音と激しい息づかいがグングンと上へ進み、3分の2ほど登ってきた地点。 ルート上でもっとも開けた景観の良い、昼食やおやつ休憩をとるのに最適なスポットに着く。ここが目的地である。

5時30分。縁にあるテーブルにもソファにもなる岩に腰を下ろし、辺りを見渡す。 本来なら見下ろす先に海が、見上げれば丸みを帯びた岩々が突起する山肌が望めるのだが、いかんせんこの季節の早朝は、夜中と変わらない。

ヘッドライトの光りが届く範疇しか、まだ世界はない。

灯りを消して、寝転んでみる。 空はあいにくの曇天で、星ひとつ見えない。 晴れていたらどんなに星空がキレイだったろうと、首を横に倒す。代わりに、家々の明かりの明滅や外灯、橙色のビニールハウス、のろのろと流れる軽トラの前照灯が煌めいていた。 そして遠くはなれた天神周辺に群集する明かりは、なぜか赤く、その赤みは空を染めていた。 それは、まるで怒れるオームの大群のように思えた。

冷え切った岩のソファが背中から体の火照りを奪っていく。心地いい。

夜や暗闇を怖がるのは、人間として正常な感覚だ。 でも必要以上に恐れてはいけない。 遠ざけるほどに、恐怖心は大きくなる。 そして、やがて飲み込まれる。

今、オレは暗闇に受け入れられている。 夜明け前の立石山に受け入れられている。

穏やかな気持ちだった。

少しづつ目が慣れて、更に空も僅かながら青みがかってきて、辺りが見えてきた。

幽界に迷い込んだかのような美しさだ。

持ってきたカメラと三脚をセットして撮影する。

心が満たされている。はっきりわかる。

嬉しくて踊りだす。

長時間露光の間。三脚にぶつからないように、踊る。

シャッターを押す。踊る。 シャッターを押す。踊る。

気づけば、感謝の気持ちで溢れている。

ほら、ごらん。生きてるぜ。 笑ってる?もちろんさ。 いっぱい貰ってありがとう。 この気持ちはやがて旅立ち、次は誰かのもとにいくんだろ? 貰ってくれてありがとう。 笑ってる?もちろんさ。 ほら、ごらん。生きてるぜ。

7時30分。寒風吹きつけるなか、膝は笑うどころか泣きながらの下山。

旋回するトンビに見送られながら家路についた。

暖房が効いてきた車中。外との寒暖差で頭がぼーっとする。 そんな鈍い頭で、さっきまでの体験を言葉にしてみる。

さて、いくつのパンチラインが生まれるか。そしていくつ憶えていられるか。

心の充実。続行中。

そして、ブログを書き終えようとしてる今。

心の充実。まだまだ継続中。

Aphex Twin - Rhubarb

shinsuke

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