top of page
Shinsuke

乾いた心臓

更新日:2020年8月1日


1年間、ずっと窓辺につりさげていた紫陽花のブーケは、自然とドライフラワーになった。 乾ききったがくの葉脈はまるで毛細血管のよう。 かりかりの茎は大動脈。

風に吹かれると、かさかさ鳴るそれを、人知れず『乾いた心臓』とよぶ。

乾いた心臓は、いくら雨に打たれても蘇らず、ただその身を湿らす。

ある夜、とくに理由もなく乾いた心臓にライターで火をつけた。 ぱちぱち音をたてて、じわじわ燃えはじめた乾いた心臓は、次の瞬間、ぼぉーっと勢いよく火柱をたてて一気に燃えた。

昇っていく白煙が暗闇にとけてゆくのを見ながら、自分のなかにある21グラムの存在を想った。

shinsuke

閲覧数:37回0件のコメント

最新記事

すべて表示

2023

師走エクスプレス2022

激動の一年だった。 燻り続けていた夢に灯がともり世界が輝いた。 背中を任せることのできる新たな仲間ができた。 そんな仲間と進むシナリオのなかで、沢山の【はじめまして】と出会った。 7年ぶり、自分の子供ほど歳の離れた若者たちとの関りができた。...

この道の独行

日々、積もるストレス。 器の小さい自分はすぐに表面張力ギリギリまで張りつめ、些細なトラブルで怒りが零れる。 すべては自業自得だが、怒りは必ず孤独をよぶ。 孤独は別に一人を狙って襲ってくるわけじゃない。 家族がいても、、いるなりの様相で孤独はあるし、だからこそ余計にくっきりと...

bottom of page