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Shinsuke

アラウンド,アイランド

更新日:2020年8月1日


26歳かそこら。

オレはクリエイトの迷路にはまり、写真から離れた。

そして結婚を機に福岡へと引っ越して心機一転、派遣社員をやっていた。

幼少期になにかトラウマでもあるのか…ネクタイを締めると吐き気がするので、スーツを着る必要のない少し特殊な仕事をしていた。

九州各地の離島へ赴き調査する日々。 きっと一生に一度だろう土地を歩いて廻るのは楽しかった。

最初に降り立ったのは忘れもしない、鹿児島県はトカラ列島に所属する口之島。

季節はジッとしてても汗が噴きでる真夏。

宿泊先はいくつかある中から一番安いところを電話予約。実際目の当たりにすると、アジ出まくりの経年劣化が激しい民宿で、案内された部屋の中にヤギが上がり込んでいて、唖然としてたら、ポロポロ、ジョーっと糞尿を垂れ流して歓迎されたのが忘れられない。

きっと飯が美味いんだろうと、気を落ちつかせて仕事し、念願のランチタイム。

けっこうな値段するのに、≪周囲をキレイな海に囲まれてるのに、、≫海鮮が一つも入っていない雑な弁当を渡され、同行してた先輩と顔見合わせ心で泣いた。

ただ、海は最高だった。 民宿のおっちゃんに教えてもらったお勧めスポットは、ビーチみたいに整備されたもんじゃ無かったが、透き通るキレイな水に、そよぐ潮風、振り返るとなだらかな丘に見慣れない植物がサラサラ揺らいでる、まさに極楽。 それを独り占め。 本当に最高だった。

いかにも火山島である形をした山頂も、調査対象だろうと、民宿から軽トラをレンタル。 民宿のおっちゃんが、「ガソリン少ないけど、まぁ大丈夫やろ~。」「頂上に温泉が湧き出てるよ~。」「野生の牛がでるから気を付けて~。」と気になるフレーズを連投しながら見送ってくれた。

対向車がきたら100%アウトな車幅ギリギリの一本道。助手席側が崖で、窓から覗くとマジでギリッギリ。

その助手席で計器を操作してたオレはスリル満点だった。

山頂に着き、気晴らしに温泉に浸かろうと、ボロボロの立て看板の先を進むと、チョロチョロ流れる湧き水があり、まさかと思い触れてみると、ほんのり温かかった。 半ば自棄で、真っ裸になり寝転ぶオレを憐れむ目でみる先輩。夏とはいえ風邪ひくほどサムいシチュエーション。。

ガソリンのメーターがとっくにエンプティを指していたので、さっさと帰ろうと、絶叫系アトラクションばりのオフロードを引き返そうとしたら、どこから現れたのか、牛の群れに軽トラの四方を囲まれていた。 ざっと数えて20頭はいる。 民宿のおっさんの顔がよぎる。 野生の牛ってなによ?って小バカにしてたけど、、マジ?

掘りたての自然薯や、高麗人参にしかり。なんだって、手つかずの野生が一番ヤバいんだ。 超こえー!!

オレ以上に、先輩がビビりまくって、20分立往生。 さすがに燃料が気になり、「発進したらどくんじゃないすか?」と促すが、「いやいやいや、やべーやろ!」「刺激すんな。」の一点張り。 埒が明かないので、先輩のスキをついてクラクションを思いっきり鳴らした。 先輩は この悪魔めっ て顔でオレを見てたが、幸運にも牛の群れは退散してくれた。

無事に下山できて、腰を下ろした部屋はアンモニア臭もなんのその、心底リラックスできたし、、晩飯は相変わらず海鮮ゼロの粗末なもんだったが、なんだか美味かった。

生きてるって素晴らしい!

そんな、波乱万丈なスタートをきった離島行脚は、行く先々で色んなことが起きた。 嘘みたいなエピソードはまだまだある。

(機会があったら紹介します。)

あの時、一緒に島を廻った先輩。 禿てて、太ってて、大酒呑みで、女好き。

日が暮れてから、本当の一日が始まると思っていた先輩。

呑みにでる前にシャワーを浴びて、きっちり身だしなみを整えて香水を振って出かけていき・・・翌日は出かけた時の服装のままで、抜けきってない酒とヤニと汗のブレンド加減がスパイシー過ぎるスメルを撒き散らしながら仕事。

男過ぎるヒトでした。

当時。生まれてくる子供の為に倹約に励んでいたオレを見かねて、頻繁に奢ってくれた先輩。

≪金はなく時間だけはある。そういうヤツは筋トレに限る。≫

ある芸人が言ってた。あれは割と的を得ている。

島によっては、民宿というより施設的なところで相部屋になることもあり・・・夕暮れ。ようやく覚醒し、お出かけ支度に余念のない先輩の横で、ビリーズブートキャンプで筋線維を虐めまくってたオレ。 視界が霞むぐらい振りまくった香水の向こうから呆れた目でみる先輩。「あんたも好きやね~。」って笑う顔が今も鮮明に蘇る。

年に一度のペースで電話をくれる先輩。

あの頃のメンバーで今も連絡をとるのは、「あんたともう一人だけ。」そう言って、口之島の話から始まり、小一時間程、思い出の中で再び離島を巡る。

「ごめんね。忙しいときに、こんなしょーもないこと長々と。」「なんか懐かしくなってね。」「今度呑みにいこーや。」と毎度、少し寂しそうな口ぶりで電話をきる先輩。

全然ごめんなことないっすよ。 電話、嬉しいです。 色々思い出して、心が温かくなります。

先輩、

もうすっかり禿げ上がってませんか?

太り過ぎは体に良くないっすよ。

気持ちほど体は若くないんで酒もほどほどに。

奥さんとお子さんを大切に。

約束どおり、いつか呑みにいきましょうね。

良いお年を。

shinsuke

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