雲と梅
雲と梅のほとりで
チューイングガムを踏んじまった
だから俺のはいている靴の右足の底には今
チューイングガムがくっついたままだ
雲の梅のほとりで
どうせだから俺は
左足の底にもチューイングガムをくっつけたくなった
雲と梅のほとりで
ガムをさがした
俺の左足はガムを踏みたくてウズウズしてたが
雲と梅のほとりには
もうガムはおちてなかった
しょうがないから俺は
自分でガムを買いに行くことにした
自分でガムを買って
自分でかんで
自分で地面に吐いて
自分でそれを踏むことにした
雲と梅のほとりから
30分ぐらい西へ歩くと
キオスクがあって
俺はそこでガムを買った
さっそく俺は
自分でそれをかんで
自分で地面に吐いて
自分でそれを踏んだ
もちろん左足でだ
だから俺のはいている靴の底には
今、両足ともガムがくっついているぜ
俺は砂の上を歩いてみたくなった
砂の上をこの両足とも
ガムのくっついた靴で
ぜひとも歩いてみたいぜと思ったんだ
俺は、すぐに砂の上を歩いた
両足ともガムのくっついた靴で
両足ともガムのくっついた靴で
両足ともガムのくっついた靴で
俺は大きな岩の上にすわって靴の両底を見た
ちゃんと砂がくっついてたぜ
俺はうれしくなって
もう一枚ガムをかんで
地面の上に吐いた
そして左足のカカトで
そのガムを踏んだ
そしてもう一枚ガムをかみ
地面の上に吐き
今度は右足のかかとで踏んだ
なんでかっていうと
そこらへんに散ってる
もみじの葉っぱを
靴の裏に、くっつくてみたくなったからだよ
俺は、もみじの葉っぱを
そおっと右足と左足で踏み
両足の靴の裏をのぞきこんだ
わくわくしながら
両足の靴の裏をのぞきこんだ
俺の靴の両底には
ちゃんともみじの葉っぱがくっついていた
俺は雲と梅のほとりに
もどってみたくなった
足の裏にもみじをくっつけたままでだ
そして
俺は今 もう一度
雲と梅のほとりにいて
俺の両足の裏には
もみじがくっついている
そうぞうしてみろよ
雲と梅のほとりで
俺の両足の底には、もみじだぜ
雲と梅のほとりで
俺の両足の底には、もみじだ
三代目魚武濱田成夫の詩集『生きて百年ぐらいならうぬぼれつづけて生きたるぜ』のなかの、雲と梅という詩です。
10代の終わりにこれを読んで、なんてロマンチックな男だろうと惚れ惚れした憶えがあります。
落葉の季節になると、この詩を思い出し、、魚武に憧れを抱いていたあの頃を思い出します。
30代半ばになって、魚武のように破天荒でいたいとは思わなくなりましたが・・・
魚武のように ロマンチックにいこう と、今もって憧れます。
shinsuke