top of page
Shinsuke

うらやましや

更新日:2021年8月15日


夏の夜。 寝苦しい夜。 あの日もこんな寝苦しい夏の夜だった。

あれは、高校2年生のとき。 いつものように自分の下宿を抜け出し『マキノ下宿』に転がりこんだオレは、3Fの親友の部屋ではなく、めずらしく2Fの先輩の部屋にいた。 先輩とはいえ、同郷の兄貴的な存在だったので、心底くだけてTVを見ながらダラダラしていた。

すると何時頃だったか、狭い通路を挟んだ向かいの部屋から、奇妙な唸り声が聞こえてきた。

その部屋は、同学年のミツグの部屋だった。 ミツグは、巨漢で(地黒なのか部活焼けか)真っ黒な肌色。例えるならノトーリアスB.I.Gの様相・・・そして中身はビギーとは似ても似つかぬ、性根の優しいやつだった。

大方、部活疲れで早々に眠りに落ちて、悪い夢でも見てるんだろうと、放っていると、苦しそうなミギーの声は次第にエスカレートしていき、シャウト手前のボリュームに。

「ミツグー、うるせーぞ!!」声を掛けるも、レスポンスはない。

ううぅ…あぁ… 止まない、まるでブードゥーの呪詛のようなミギーのフロー。

さすがに様子が気になり、重い腰をあげたとき、声色に変化があった。

うぅ…ああぁ…ああぁ…ん あ…あん…あぁぁん ??? なんだか艶めかしい。

「どういうのコレ?」先輩と顔を見合わせる。

喘ぎ声は、機関車のようにピッチをあげていき、 ぁ…あ…ああああぁぁぁっ!!  どうやら果てた。

「おい、ミツグ。なにしよると!?」「大丈夫か!!」長渕キック数発で、粉々になりそうな扉をたたく。

と、少し間があいて鍵がまわり、のろっとミツグが顔をだした。

だくだくに汗を流しながら、おそらくは蒼白の顔面を強張らせ、合わない焦点で、オレと先輩の間に目線をやり・・・

「ゆ…幽霊におかされた。。」

消え入りそうな声で言った。

突飛すぎて「はぁ?」と真顔で返す。

「やから幽霊に…」 ミギーのファンタジックでリアルシットなパンチライン。ようやく理解に達したオレ達は腸がよじれるほど爆笑。

「いや、笑いごとじゃないって。。」涙目のミツグ。

コトの顛末を聞くと、、案の定、疲れて果てて布団に横たわり、寝落ちしかけていたらしく、すると突如、金縛りに襲われ、うんともすんとも身動きがとれなくなったところに、白い服を着た透き通るほど透明感のある(ていうか透き通った)女性が現れ、近づいてきて、パンツを脱がされ上に被さってきたのだそうだ。

オレ達は涙目でヒーヒー悶えながら、「で、美人やった?」と問うと、照れながら「きれいな人やった。」とまんざらじゃない返答。

ミツグの肩に手を添え、「童貞卒業おめでとう!!」心からの祝福を送ったのだった。

まったく、世にも奇妙でキテレツな真夏の夜の物語。。

これは、怪談話なのか猥談話なのか・・・そして、信じるか信じないかは、アナタ次第です。

shinsuke

閲覧数:16回0件のコメント

最新記事

すべて表示

2023

師走エクスプレス2022

激動の一年だった。 燻り続けていた夢に灯がともり世界が輝いた。 背中を任せることのできる新たな仲間ができた。 そんな仲間と進むシナリオのなかで、沢山の【はじめまして】と出会った。 7年ぶり、自分の子供ほど歳の離れた若者たちとの関りができた。...

この道の独行

日々、積もるストレス。 器の小さい自分はすぐに表面張力ギリギリまで張りつめ、些細なトラブルで怒りが零れる。 すべては自業自得だが、怒りは必ず孤独をよぶ。 孤独は別に一人を狙って襲ってくるわけじゃない。 家族がいても、、いるなりの様相で孤独はあるし、だからこそ余計にくっきりと...

bottom of page