別れと新たな出会いの交錯する季節。
卒業も入学・入社もすっかり縁遠くなって、幾年。…なのに、なんだか妙にセンチメンタルです。
あ、そういえば、先週。非常勤講師として受け持った専門学校生の卒業式に顔を出しました。 7年目にして初めて行きました。
(感傷的なのは、そのせいか…。)
最後にみんなに会えて嬉しかったです。
それぞれのライフストーリー、幸多きこと願っています。
自分のことを思い返してみれば、中学の卒業式が一番印象に残っています。
度々。書いていますがオレの地元は、それはそれは田舎です。
村内に小学校こそ2校(分校程度のものが)ありましたが、小中ともに各学年1クラスしかありませんでした。
保育園、幼稚園から数えれば、10年を超える時間を共有するクラスメイト。それは友達以上、家族未満の存在。
進学となると、通える距離に高校がない為、実家を出て、寮生活もしくは下宿する必要がありました。 おかげで校区(?)に縛られず、自由に高校選択できました。
中学を卒業するということは、別れをリアルに感じる・・・大げさにいえば今生の別れを連想させる一大行事でした。
絶対泣かないと誓って臨んだ式当日。入場からすでに表面張力ギリギリだった感情は『仰げば尊し』の歌いだしで溢れて、結局 号泣してしまいました。。
そんな、ハートウォームな卒業式の3~4ヶ月前。
昼休み。いつものようにオレは、親友と生徒会室で、BOONやsmartといったファッション誌をペラペラめくりながら、「やっぱり甲本ヒロトってヤバい!」とか世間話に花を咲かせていた時。
親友が、 「なぁ、アヤちゃんってさ、どーなるっちゃろ?」 と、問いかけてきました。
不意をつかれて内心ドキッとしたオレは、 「・・・さぁ、わからん。。」 と、返し、 「学校には来とるっちゃろ?」「ていうか、この階の進路指導室におるっちゃろ?」 矢継ぎばやに問いかえしました。
「・・・らしいよね。」
「もうすぐ卒業やけどさ、このままでいいんかな?」
「・・・。」
アヤちゃんとは、中3に進級した時に、転校してきた女の子。 どこから引っ越してきたのか忘れましたが、あの村より都会だったことは間違いないと記憶しています。
大人びた雰囲気のコで、大層 頭が良く、いままで周りにはいなかった、馴染みのない存在でした。 きっと、オレを含めた、みんなが、知らず知らず 物珍しそうに接していたんだと思います。
それが、原因なのかわかりませんが、夏休み明けから学校に来なくなりました。
転校生も、不登校も、小さなコミュニティでは、かなりのレアケースで、クラスはザワつきました。
その後、しばらくして担任から「体調が悪く、卒業まで別教室で勉強することになった。」と伝えられました。
アヤちゃんが、まだ同じ教室にいた頃。給食のグループが同じで、机を合わせて食べていたときのこと。 その日は、校内放送が週に1度、生徒の持ち込みCDをかける日で、THE YELLOW MONKEYがかかって、オレが反応を示すと、「ワタシが持ってきたんだ。もしかしてイエモン好き?」と前のめりで聞かれました。 「詳しくはないけど、好き。」耳を赤くしながら答え、「イエローモンキーって日本人ってこと?」と話を膨らませるように返した憶えがあります。
うぶだった少年時代のオレは、それだけのことで、ド緊張。その後の展開は記憶にありません。
別に恋愛感情はありませんでしたが、このコともっと話がしたいと思いました。
「オレたちが原因なんかな?」
「わからん。・・・わからんけど、無関係って気もせん。。」
「なぁ、ちゃんと話したくねぇ?」
「・・・そうやな。」
オレ達は、生徒会室を出て、つきあたりにある進路指導室の前に立ち、顔を見合わせました。
心臓が破裂しそうでした。
ノックしようとした瞬間。チャイムがなり、掃除の音楽が流れ始めて…オレ達はダッシュで生徒会室に戻り、「やべー、超キンチョーした!」と一頻り騒いで、階段を駆け下りていきました。
次の日の昼休み。オレ達はやはり生徒会室に居座り、昨日の反省会&作戦会議。
そして早速、進路指導室へと向かい、どちらからともなく頷き合って、オレは扉をノックしました。
頭が真っ白になるほど、ドキドキしながら、反応を待っていましたが、、無反応。
意を決して、
「あ、、アヤちゃーん。」 声がひっくり返り、親友に肩を小突かれました。
じゃあ、オマエが言えとメッセージを込めて小突きかえすと、
「えーっと、あ、、アヤちゃ~ん。」 声が震えていました。
沈黙のなか、立ちつくすオレ達。
「オレ、シンスケ。わかるかな?」
沈黙。
「ていうか、いる?」
沈黙。。
チャイムがなり、掃除の音楽が流れ始めて…オレ達はダッシュで生徒会室に戻りました。
責任感だったのか、ただの好奇心だったのか・・・このやり取りを、4日くらい続けました。
4日目。
「ていうか、いる?」
やはり沈黙。 沈黙。沈黙。。
チャイムがなり、掃除の音楽が流れ始めて…オレ達は、いい加減 業を煮やして、
「アヤちゃん、開けていい?」
沈黙。 そのうえを優雅にクラッシック音楽が流れていました。
「アヤちゃん、開けるね。」
オレ達は、扉に指をかけて、どちらからともなく頷き合って、扉をすーっと引きました。
徐々に見える室内。張り詰める緊張。 優雅にクラッシック音楽…
「ア・ヤ・・ちゃん?」
もぬけの殻でした。
オレ達は、顔を見合わせ、大笑いしました。
結局、会えずじまいでした。
それから時は流れ、卒業から2年と半年後の夏休み。
地元の夏祭りに行くと、久しぶりの顔ぶれが揃っていました。
垢ぬけてたり、相変わらずだったりの面々と一刻の再会を懐かしみました。
そこに、アヤちゃんがバンドを組んで、ステージに立ったというセンセーショナルな情報が飛び込んできました。
残念ながら、演奏は見逃しましたが、バンドメンバーらしき奴らと連れだって歩くアヤちゃんと会場内ですれ違いました。
一層大人びたアヤちゃんは、ピンク色の髪をなびかせていました。
なにか言いたかったのですが、なんて言えばいいのかわからず、、軽く会釈をかわしただけで、念願(?)の再会は終わりました。
「アヤちゃん、笑ってたな。」
同じ高校に進学した親友が言いました。
「そうね。なんかわからんけど、ほっとしたわ。」
振り返り、小さくなるアヤちゃんの後ろ姿を眺めました。
真夏のギラギラした日差しに照らされたピンク色が、ただただ眩しかったです。
センチメンタルな気分に引っ張られて、そんな遠い昔のことを思い出しました。
shinsuke