あれは、まだ息子が保育園に通っていた頃なので、3年,4年ほど前だと思います。 今頃のように、冬だったか、はたまた夏だったのか…その辺の記憶はありません。
朝、息子を保育園に送っていった帰り道。 踏切をノラリクラリと自転車で、渡っていると、レールの隙間に何かが挟まっていて、何となく気になったので、片手はハンドルを握ったまま屈み、もう片方の手で拾い上げると、、それは、自然とドライフラワーになった『名前のわからない花』の先端でした。
キレイでした。
欠けたり、崩れたりせずに、風になびいた様な絶妙な形を保っていたのは、きっと落っこちた場所が良かったんだと思います。
優しく手のひらで包み、そーっと自転車を漕ぎながら家に持ち帰りました。
その日の夜。みんなで夕飯を食べ、息子と風呂に入り、いつもと変わらない日常の幸せをかみ締めた後。
息子とkacoが、寝室へあがっていくと、かわりに仕事部屋から、カメラバッグや三脚をリビングへと降ろして、撮影のセッティングに取り掛かりました。
撮りたいイメージは昼間のうちに固まっていたので、準備はスムーズでした。
今回はストロボではなく、身の回りの物を照明にしようと、フィルムを見る為のライトボックスに『名前のわからない花』の先端を置いて、自転車用の着脱式ライトや懐中電灯。七色に光る息子のオモチャ。などを見繕いライティング。
周りの明るさが干渉しないように、リビングの照明を消して…三脚に固定したカメラを俯瞰のアングルにセットし、ファインダーを覗きながら、オモチャや懐中電灯の位置を あーでもないこーでもない と延々と探りました。
そんな地道な作業のお供に音楽は不可欠です。
二階で寝ている二人の邪魔にならないように、イヤホンを装着。 ミニマルかつ夢見心地な音楽を聴きたい気分だったので、Four Tetの5thアルバム『There Is Love In You』を再生しました。
真っ暗なリビングの隅で、腰を折り集中して見つめる先は、静かに佇むドライフラワー。と、それを四方から照らす激しい点滅の灯。
ノーアルコール。もちろんノードラッグのまっさらな頭と体。音と光の織りなすトリップ現象。
ちょっとしたトランス状態に陥ったオレ。 シャッターを切る。踊る。シャッターを切る。踊る。踊る。シャッターを・・・
気が付くと2時間近く経っていました。
腰はバキバキに痛いし、目もバチバチに血走り、眩暈に襲われ、、吐き気が凄くて、しばらく動けませんでした。。
数時間前の家族団らんに心底リラックスしていた自分。 そして、息子が見たらどう思うかってくらい高く深いところまで飛んでいった自分。さらにはその後の無残な成れの果て。。
人間の心は、なんと振り幅の激しいことでしょうか。
そんなことを悟った夜でした。
※これを書きながら、当時の感覚を少しでも呼び戻そうとFour Tetを聞いていたら、フラッシュバックに見舞われたのか、軽く眩暈が・・・あぶないあぶない。。
Four Tet 5thアルバム『There Is Love In You』の1曲目。 Angel Echoes
shinsuke